論文抄読会

第2回消化器外科論文抄読会を開催いたしました。

2025年5月20日

開催日:2025年5月17日
司 会:松田明久先生
指導医:室川剛廣先生
発表者:小森啓正先生
論文名:Real-world safety and efficacy of neoadjuvant docetaxel, cisplatin, and 5-fluorouracil therapy for locally advanced esophageal squamous cell carcinoma
掲載雑誌:BMC Cancer (2025) 25:636

今回の抄読会では、上部消化管グループの中核を担う若手外科医であり、現在大学院にて研究を行っている小森啓正先生にご担当いただきました。小森先生は食道外科を志すとても優しい先生で、長時間の手術を終えて疲れている状況でも冷静沈着に病棟管理業務をされており、若手のお手本になる存在です!
そんな小森先生から、多数の食道癌患者さんが当科でDCF療法を受けている現状を踏まえ、実臨床に即した治療効果や安全性を評価した貴重な研究をご紹介いただきました。あわせて、JCOG1109試験との比較や臨床応用の可能性についても議論を深める内容でした。
本研究は、がん研有明病院にて2016年〜2023年の間にネオアジュバントDCF療法(Docetaxel+Cisplatin+5-FU)を受けた局所進行食道扁平上皮癌(ESCC)患者86名を対象に、治療効果と再発、無再発生存率(RFS)、病理学的完全奏効(pCR)との関連、および有害事象の実態を解析した後ろ向き観察研究です。
主な結果として以下が明らかになりました。
R0切除率は96.2%、pCR達成率は14.7%、TRG grade1aは21.3%
SCC高値はpCRやTRG grade1a不達成のリスク因子とされ、ypN陽性とGPS(Glasgow Prognostic Score)高値が再発の独立予測因子であること
また、治療完遂率は83.7%、Grade3以上の好中球減少症が約6割に認められたものの、有害事象の発現と治療効果との直接的な相関は認められず、実臨床下でも安全かつ有効な治療戦略であることが示されました。
食道癌に対する集学的治療のうち、手術の位置づけは?
直腸がんに対するTNT(total neoadjuvant therapy)のように食道癌でもpCRを狙うために術前治療を行うのか?
この論文では長期成績に焦点をあてているが、術前治療を行った場合といきなり手術をした場合で短期成績に違いはあるか?
SCC高値は予後不良とのことであるが実際はどうか?
といった観点から、活発な意見交換が行われました!
発表者・指導医の専門性を活かした多角的な、診療・教育・研究の融合を図ってまいります。
次回は6月21日、発表者は大野崇先生、司会は清水哲也先生、指導医は横山康行先生です。
どうぞご期待ください。

日本医科大学付属病院消化器外科論文抄読会
日本医科大学付属病院消化器外科論文抄読会


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