論文抄読会

第3回消化器外科論文抄読会を開催いたしました。

2025年6月26日

開催日:2025年6月21日
司 会:清水哲也先生
指導医:横山康行先生
発表者:大野崇先生
論文名:Combined effect of frailty and sarcopenia on postoperative complications in older adults undergoing curative surgery for hepato-biliary-pancreatic cancer
掲載雑誌:Ann Gastroenterol Surg. 2025;9:587–594.

今回は、肝胆膵外科で中心的な役割を担う大学院生の大野崇先生より、高齢者におけるフレイルとサルコペニアの併存が肝胆膵癌手術の術後合併症に及ぼす影響について発表していただきました。
大野先生は、必要な時には必ず病棟にいて、普段から高速で業務をこなす病棟スペシャリストである一方、高い技術力でたくさんの手術をこなす若手外科医です。
高齢者の診療に積極的に取り組まれており、今回も臨床現場に即した視点で、実践的かつ興味深い発表をしていただきました。

論文の概要

本研究は、単施設で2018年11月〜2023年12月に肝胆膵がんに対する根治手術を予定された75歳以上の107例を対象に実施された後ろ向きコホート研究です。
術前にフレイル(FI-CGA-10)とサルコペニア(筋量・握力)を評価し、術後1か月以内のClavien–Dindo Grade III以上の合併症がアウトカムです。
結果としては、フレイルとサルコペニアが共に存在する群では術後合併症のリスクが顕著に高いこと、これらの併存が術後合併症の予測因子であることが分かりました。

ディスカッションの要点

フレイル・サルコペニアの定義や診断基準の実用性、他の診断法との比較についての紹介。
「フレイルだから手術をしない」のではなく、術式選択や周術期管理の工夫により適切な治療を提供する視点が重要。
日常診療の外来や病棟でも簡単に実施可能なスクリーニングできる方法はないか探してみる。

まとめ

今後ますます増加が予想される高齢者への外科治療において、フレイルとサルコペニアの的確な評価は個別化医療の実現に不可欠な要素です。
今回の抄読会は、臨床現場の課題を捉えた発表と活発な議論が印象的であり、非常に有意義な会となりました。
今後もチーム全体で知識を共有し、より良い医療提供を目指していきます。
次回は7月19日で司会は川野陽一先生、指導医は向後英樹先生、発表者は林光希先生です。
次回もぜひご期待ください。

日本医科大学付属病院消化器外科論文抄読会


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