論文抄読会
第11回消化器外科論文抄読会を開催しました。
2026年3月1日
開催日:2026年2月21日(土)
司 会:進士誠一先生
指導医:向後英樹 先生
発表者:宮川真央先生
論文名:Suture Techniques and Materials for Fascial Closure of Abdominal Wall Incisions: A
Comprehensive Meta-Analysis
掲載雑誌:Annals of Surgery Open. 2025
発表者の紹介と論文の選定理由
今回も外科専攻医の宮川先生より、腹壁瘢痕ヘルニアの予防という、外科医にとって極めて身近で重要なテーマに関する論文をご紹介いただきました。宮川先生は日頃から手術手技や周術期合併症に強い関心を持ち、臨床現場での疑問を大切にされている先生です。毎月行われているヘルニアカンファレンスにおいて、術後合併症として腹壁瘢痕ヘルニアが議題に上がることが多く、縫合方法や縫合糸の選択が術後成績に与える影響に興味を持ったことから、本論文を選定されました。
論文の概要
本研究は、開腹手術後の腹壁瘢痕ヘルニア発症を抑制するための縫合手技および縫合糸の違いについて検討した、包括的システマティックレビューおよびメタアナリシスである。Medline、EMBASE、CENTRALを用いて文献検索を行い、RCT
41件、前向きコホート研究9件を解析対象とした。主要アウトカムは腹壁瘢痕ヘルニア発症率、副次アウトカムは筋膜離開、両者の合併、創部感染とした。解析の結果、長期吸収型縫合糸を用いたsmall-bite
suturingが、腹壁瘢痕ヘルニアおよび創部合併症の発症抑制に有用であることが示された。
ディスカッションの要点
1970年代の研究も含まれており、時代による縫合糸性能の違いといういわば時間的バイアスの影響がある。
Small-bite suturingに関する解析では主にPDSが使用されている。縫合糸を揃えることが必要と考えられた。
術者バイアスについては十分に検討されたメタアナリシスがなく、本研究のlimitationの一つと考えられた。
当科の各グループにおける縫合方法や縫合糸の違いについても共有され、日常診療との対比が行われた。
今後は、PDSを用いたsmall-bite suturingを意識的に取り入れるとの意見があった。
指導医コメント
医局員全員に関係する非常に身近なテーマで、馴染みやすく良い題材でした。メタアナリシスという研究手法から学べる点も多く、内容としても興味深い論文だったと思います。本抄読会を通じて、出席者の皆さんがメタアナリシスに対する理解や関心を深める良い機会になったのではないでしょうか。
まとめ
腹壁瘢痕ヘルニアは、術後長期にわたり患者のQOLに影響を与える重要な合併症です。日常的に行っている閉創に対しても、エビデンスに基づいて見直すことの重要性を再認識する抄読会となりました。
次回予告
第12回抄読会は 2026年3月21日(土)に開催予定です。
司 会:清水哲也先生
指導医:高橋吾郎先生
発表者:若杉翔先生
次回が今年度最後の抄読会となります。ぜひご期待ください。